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アート探訪記~展覧会インプレッション&インフォメーション
2025.5.24
銀座・和光「金工の深化 Ⅲ」 語りかけてくる、素材としての金属が持つ無限の可能性
左/wonders 097-2 18×18×高さ16.5㎝ 久米圭子 右/揺れる想い 50×68×高さ99㎝ 相原健作
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金属という素材に魅せられ、独創的な世界を生み出している6人の金工作家の作品が、セイコーハウス6階 セイコーハウスホールに集いました。今回で3回目を数えるこの展覧会は、 題して「金工の深化 Ⅲ」。独自の技法を駆使して創り上げられた造形の数々は、素材としての金属が持つ無限の可能性を私たちに語りかけてくれます。
大好きだった昆虫を、自分のフィルターを通して作品へと昇華 ──相原健作──
糸トンボが羽根を休めている。6本の細い脚が、水辺の葦をしっかりと掴まえている。脚の曲がり具合などはリアル。でもよく見ると、目の玉が大きかったり、4枚の羽根が胴の同じ場所から生えていたりと、実物とは異なる部分も随処にある。そして、金属のなかでも鉄という極めて硬い素材にもかかわらず、「揺れる想い」という作品名が物語るように、糸トンボはどこか儚げだ。
相原健作さんが手掛ける糸トンボや揚羽蝶は、鉄からなるこうした昆虫たちが単体として存在しているのではなく、あくまでも風景のなかに存在する生物として息づいているかのようだ。
「自分というフィルターを通して、自分自身が好きな部分はデフォルメし、逆に不必要だなと思う部分は思い切って省略しています。でも、最初は実物をじっくり観察し、スケッチすることから始まります。実際に虫を捕まえてくるのがよいのでしょうが、最近ではあまり実物もいなくて、標本を購入したりしています」
羽根を休める金色の糸トンボ。大きな目玉はどこを見ているのだろうか。あえて斑(まだら)になるように金箔を施した羽根は、どこまでも軽く柔らかな表情。Bringing Happiness 21×54×高さ75㎝
幼い頃から昆虫が大好きで、加えて物作りも大好きだった相原少年が、長じて金工の分野に進んだ際、モチーフを昆虫に求めたのはある意味では当然の流れだった。
「美大の先輩たちの作品は、人体や動物をモチーフとしたものが多かったのですが、自分にとって金属というのは、やはり硬質な素材であり、それは昆虫が持つ外骨格という構造にとてもマッチしているように思えたのです。しかも幼いころからの虫好きという自分の志向があるので、極めて自然に昆虫を作るようになりました」
先人が成し遂げた、高度な鍛金技法を解明
相原さんの作品は鍛金(たんきん)と呼ばれる技法だ。ハンマーで叩き伸ばした鉄をカッティングし、つなぎ合わせて造形していく。鑿(のみ)などは用いないシンプルな技法で、日本では古来、刀や甲冑などの制作に用いられてきた。
「どのようにしてそれが作られたのか、その製作方法が分からない先人の作品もあります。その製作法の解明研究等も大学で行っています、最近復元できたのがこれです」
それはさりげなく展示してあった瓢箪だった。一見、なんの変哲もない金属でできた瓢箪に思えるが、その瓢箪が一枚の丸い金属板を叩くという工程のみを経て、優美な局面を描く立体となり、しかも繋ぐという作業は一度も行われていないと聞くと、驚きに捉われる。
「文化財の復元作業などにも関わっていますが、先人たちが編み出した技術の凄さに驚くことが多いです」
「揺れる想い」の奥にさりげなく展示されている瓢箪。長らくその作り方が謎とされてきたが、相原さんが技法を解明し、復元に成功した。瓢箪の口の部分が、じつは鍛金加工するベースとなる丸い金属板の外周部分にあたる。金属板を叩くという作業のみで、美しい立体を生み出す技法にただただ感服する。
結果がすぐ判明するライブ感のような即効性。それが金工の面白さ
「鍛金は、基本的にはハンマーで金属を叩くという作業の繰り返しですが、それだけに奥が深い技法です。折り曲げる角度のちょっとした違いや、カッティングのミリ単位の差で、作品の表情が大きく変わってきます。この糸トンボも、ミリ単位の調節を最後の最後まで行っています。自分自身、あきらめが悪い性格というのでしょうか」
相原さんは苦笑いする。
「ただ、それが金工の魅力でもあるのです。言い換えれば即効性というか、ライブ感というか。陶芸のように窯出しするまでは結果が分らないとか、漆芸のように乾くまで時間がかかるということはなく、その場で結果が出てしまう、その面白さが金工にはあるような気がします」
鉄でできた昆虫たちに、しなやかさを纏わせてあげたい
相原さんの作品の素材は主に鉄だ。箔がほどこされた表面は、控えめな黄金色だったり、鈍色(にびいろ)を湛えて深く沈みこんだりしている。
「鉄は金属のなかでも硬く、堅牢な材質です。でも、日本刀がそうであるように、しなやかなイメージもあります。私は、そのしなやかさをも大切にしたいと考えています。昆虫たちにも、鉄の硬さだけでなく、しなやかさを纏わせてあげたいですね」
相原さんが手掛ける糸トンボや揚羽蝶たちが、ただ昆虫として存在しているのではなく、風景のなかで息づいているように見えるのは、相原さんが意図するように、ある種のしなやかさを虫たちが放っているからだろう。そう思って改めて作品を見ると、止まっていた糸トンボが、羽根を広げ今にも飛び立ちそうな、そんな気配を一瞬感じた。
生きていくための仕組みや構造をデザイン化し、金属で表現する ──久米圭子──
なんと表現すればよいのだろう。複雑に組み合わされた金属が、小宇宙を形成している。しかもその小宇宙は、けっして無機質ではなく、むしろ微かに息づく微生物のような趣で自らの存在感をひっそりと主張している。内部を構成するパーツは薄いブルーグリーン。その控えめな淡い色調と曲線を描くパーツの組み合わせが、無機質というよりも、有機的な生命の根源すら感じさせる。
「生きていくための仕組みや構造のようなものに着目し、それをデザイン化して金属で表現できたら。そんなことを考えています。モチーフは生物全体かもしれません」
久米圭子さんの作品は不思議だ。久米さん自身がそう語るように、生命の原初形態のようなミクロの世界でありながら、同時に、完結する小宇宙のようでもある。
「花粉、種、貝殻、いろいろなものの構造を見つめそこからヒントをもらっています。海に漂う動物プランクトンの一種である放散虫や、ときには顕微鏡で見た細菌の図録までも眺めています。金属というと、イメージ的には硬質ですが、金属でありながら ちょっとふにゃっとして柔らかな感じを両立させているつもりです」
いくつものパーツを組み合わせた内部構造を、あたかも守り保護するかのように外枠が覆う。金属ではあるものの、微かに動いているかのような、原始的な生物を思わせるたたずまい。wonders 097-2 18×18×高さ16.5㎝
思い描いた完成形の断面図を図面化。作業はそこから始まる
久米さんの作業は、頭のなかで思い描いた完成形の精密な断面図を、実際に図面化することから始まる。その断面図に描かれたパーツを、真鍮板からくり抜くように糸ノコで切り出し、やすりで綺麗に整えてから組み立てていく。と書けば簡単そうに思えるが、実際はそうではない。
「1個のパーツのほんの僅かな寸法の狂いのために、全体を組み上げることができなくなり、切り出したほかのパーツが全部使えなくなってしまうこともあります。多い作品ですと、30パーツくらいありますから、がっくりです。断面図も3dプリンターや、建築の製図を描くキャドなどは使わず、あくまでも頭のなかで描いたものを平面図にしています。そのような細かいことを考えるのが、自分自身好きなのでしょうね。ただ、作業場でやっていることといえば、図面通りに真鍮板からパーツを糸ノコで切り出し、それをやすりで整えたり、ちょっと熱を加えて曲げたり、時には透かし彫りを加えたりという、昔ながらの金工の世界です」
さまざまなパーツを組み合わせることで内部を複雑化し、小宇宙を構築
「美大に在籍していたとき、金属で半球を二つ作り、それをつないで、つなぎ目をわからなくして球体にしてみたことがあります。金属板という平面からスタートする金工の世界では、つなぐという工程を経ないで、閉じた球体をつくることは不可能ですが、こうすれば、感じのよい表現ができるかもしれないというヒントのようなものが得られました。接ぐのではなく、さまざまなパーツを組み合わせることでひとつの世界を構築し、その内部をどんどん複雑にしていく。そこに、昔から興味のあった生命の成り立ちのようなものを吹き込んで出来上がったのが、こうした作品です」
壁面を彩る、可憐な金属の花
壁面には、「loop」と名付けられた作品が掛かる。薄くスライスしたレモンのような金属板をループ状に幾重にも重ねた、それ自体が可憐な花びらのような、あるいは複雑な雪の結晶のような、愛らしい作品だ。 「wonders097-2」と同じく、金属板のところどころは薄いブルーグリーンに発色している、この発色は緑青。久米さんが用いる素材である真鍮に含まれる銅が、空気中の水分などと反応することで生じる独特の、そしてどことなく懐かしい色合いだ。
壁面を飾る可憐な作品は「loop ん14」と命名。その名の通り、繊細に切り出された真鍮板が、何枚もループ状に重なり、あたかも一輪の花が開いたような趣。15×15㎝
「私の作品をご覧になった方が、何を想像されるかは、まったくの自由です。ただ、作品に愛着のようなものを感じていただけたら、いいなと思っています。内側の方は、きっちり組み合わさっているように見えますが、なかにはわざと動くように組んであるパーツもあります。そんなちょっとした“遊び”のようなところも見つけてみてください」
話を伺った2人の作家のほかに、今回の展覧会には、以下の4名の方々が、それそれ独創的な作品を出品している。
加藤貢介さん、坂井直樹さん、髙橋賢悟さん、満田晴穂さん
◆アート探訪記~展覧会インフォメーション
金工の深化 Ⅲ ──Evolution of Metal Wors Ⅲ──
会期:2025年5月22日(木) 〜 2025年6月1日(日)
時間:11:00 – 19:00 最終日は17:00まで
- 場所:セイコーハウス 6階 セイコーハウスホール
櫻井正朗 Masao Sakurai
明治38(1905)年に創刊された老舗婦人誌『婦人画報』編集部に30年以上在籍し、陶芸や漆芸など、日本の伝統工芸をはじめ、さまざまな日本文化の取材・原稿執筆を経た後、現在ではフリーランスの編集者として、「プレミアムジャパン」では未生流笹岡家元の笹岡隆甫さんや尾上流四代家元・三代目尾上菊之丞さんの記事などを担当する。京都には長年にわたり幾度となく足を運んできたが、日本文化方面よりも、むしろ居酒屋方面が詳しいとの噂も。
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Features
藤田嗣治と国吉康雄、神戸で百年目の再会を
2025.5.23
兵庫県立美術館にて開催。「藤田嗣治×国吉康雄:二人のパラレル・キャリア―百年目の再会」
国吉康雄 《幸福の島》 1924年 東京都現代美術館
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20世紀という激動の時代に、異なる大陸で筆を握り続けた二人の画家――藤田嗣治と国吉康雄。その足跡をたどる特別展「藤田嗣治×国吉康雄:二人のパラレル・キャリア―百年目の再会」が、兵庫県立美術館にて2025年6月14日(土)から8月17日(日)まで開催される。
Max Yavno 《「逆さのテーブルとマスク」を制作中の国吉康雄》 1940年頃 福武コレクション
エコール・ド・パリを代表する存在として知られる藤田と、アメリカで移民として芸術を切り拓いた国吉。二人は1925年と28年のパリ、さらに1930年と49年のニューヨークで接点を持ちながら、平行した人生を送った。
藤田嗣治 《自画像》1929年 東京国立近代美術館
© Fondation Foujita / ADAGP, Paris &JASPAR, Tokyo, 2025 E5974
1925年、二人がパリで交錯した年からちょうど100年にあたる節目に開催される展覧会では、母国への一時帰国や日米開戦下の制作、さらに戦後の藤田のフランス永住と国吉の死まで、それぞれの地で名声を得ながらも戦争と祖国への想いに揺れた人生を紹介。二人の作品を対比させながら、全9章にわたり時系列で紹介する。
国吉康雄 《誰かが私のポスターを破った》 1943年 個人蔵
会場には、藤田の代表作《五人の裸婦》《舞踏会の前》、国吉の《幸福の島》《誰かが私のポスターを破った》など、国内主要コレクションから代表作が一堂に集結。また、藤田の1920年代の大作、《五人の裸婦》と《舞踏会の前》の2点が本格的な修復後、初めて同じ会場で出品されるのも見どころだ。
国吉康雄 《サーカスの女玉乗り》 1930年 個人蔵
親しかった在外邦人画家の運命を分つこととなった、1941年12月8日の日米開戦。藤田は日本に帰国後、作戦記録画を手がけ、戦後フランス国籍を取得。国吉は敵性外国人とされながらも民主主義の旗のもとアートを武器に闘い続け、二人が再会することはなかった。
戦争に翻弄された二人の人生。百年の時を超えて、今ひとつの空間で響き合う。
◆藤田嗣治×国吉康雄:二人のパラレル・キャリア―百年目の再会
【会期】2025年6月14日(土)~8月17日(日)
【会場】兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1 HAT神戸内)
【開館時間】10:00~18:00(入場は17:30まで)
【休館日】月曜(7月21日・8月11日は開館、翌日休館)
【観覧料】一般2,000円(前売1,800円)、大学生1,200円(前売1,000円)、高校生以下無料、70歳以上1,000円
【前売券販売期間】販売中~6月13日
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Features
バカラの美学を体感する、丸の内の新たな空間
2025.5.21
「バカラショップ 丸の内」「B bar Marunouchi」が移転オープン
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フランスの「アール・ドゥ・ヴィーヴル(生活美学)」を体現するバカラが、丸の内の旗艦店とバーをリニューアルオープン。5月24日(土)にオープンする「バカラショップ 丸の内」は丸の内二丁目ビル1Fに、5月12日(月)にオープンし、24日(土)にグランドオープンを迎える「B bar Marunouchi」は新東京ビル B1Fに、それぞれ新たなロケーションを得て生まれ変わる。
ブランドの象徴である深紅の縁取りが、丸の内仲通りの豊かな緑や洗練された街並みと調和する「バカラショップ 丸の内」。アーチを模したディスプレイ棚や、焦がしたような加工を施したスギ材の棚、19世紀万国博覧会で展示されたバカラ作品を彷彿とさせるトランク型のディスプレイケース、スチールリボンのコンソールなど、店内のディテールの一つひとつに伝統と職人技へのオマージュが込められ、バカラの世界を旅するような体験ができる。
さらにファサード左側には、季節ごとにテーマが変わるディスプレイボックスが登場。選び抜かれたクリスタル作品が、ショップのコンセプトを象徴するかたちで展示され、行き交う人々の視線を惹きつける。
同日オープンする「B bar Marunouchi」は、クリスタルの輝きと深紅の世界観が交差するラグジュアリーな空間。入口でまず迎えてくれるのは、カラを代表する燭台「ツァリーヌ」や、200点以上のバカラグラスで構成された「バカラの壁」。その奥に進むと、深紅のソファやシャンデリアが織りなす非日常の空間が広がっている。
ここには、貴重なヴィンテージから最新シリーズまで約200種類を超えるバカラグラスが並び、ゲストはその中から好みの1客をセレクト。グラスに合わせてバーマンが仕立てるオートクチュールなカクテルを堪能できる。
ただの贅沢ではなく「アール・ドゥ・ヴィーヴル」を追求するバカラ。新たに誕生した二つの空間で、ブランドの真髄に触れるひとときを楽しんではいかがだろうか。
バカラショップ 丸の内
【住所】東京都千代田区丸の内2-5-1 丸の内二丁目ビル 1F
【営業時間】月~土 11:00~20:00/日・祝 11:00~19:00
【TEL】03-5223-8868
B bar Marunouchi
【住所】東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル B1F
【営業時間】月~土 16:00~26:00/日・祝 休
【TEL】03-5223-8871
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Events
【5月22日(木)~ 和光「金工の深化Ⅲ ―Evolution of Metal WorksⅢ―」】
2025.5.15
銀座・和光 セイコーハウスホール 金属造形分野の気鋭の作家6名による美の競演
左・加藤貢介 CUBE12 8×8×8cm 右・髙橋賢悟 flower funeral -goat- 29×37×高さ17cm
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セイコーハウスホールでは、5月22日(木)~6月1日(日)の期間、金属造形の分野において際立つ個性を発揮する気鋭の作家6名による、和光では3回目の展覧会となる「金工の深化Ⅲ ―Evolution of Metal WorksⅢ―」を開催します。


相原健作 揺れる想い 50×68×高さ99cm
鍛金の高度な技を用いながら、昆虫たちのいる風景を詩情豊かに表現する相原健作氏。自作したダマスカス鋼の波状模様と端正な造形が織りなす世界を創作する加藤貢介氏。透かし彫りとロウ付による生命の息吹や小宇宙を感じる集合体を生み出す久米圭子氏。茶の湯の侘び寂びの精神を取り込み、現代的に進化させた作品を提案する坂井直樹氏。本物と同じように可動する「自在置物」の技で昆虫類を原寸大で制作する満田晴穂氏。
そして今回新たに、自然の中で繰り返される生と死の営み、循環する世界観を探求している、髙橋賢悟氏がメンバーに加わりました。


満田晴穂 自在手長黄金 80×145×高さ40mm
【満田晴穂氏の抽選販売について】
満田晴穂氏の作品の購入につきましては抽選にて承ります。
ご希望の方は、会場のセイコーハウスホールへご来場ください。
電話やメールなどでのご応募はお受けいたしかねます。
応募期間:5月22日(木)11:00~19:00
5月23日(金)11:00~13:00
抽選結果通知:5月23日(金)15:00~18:00
◎ご来場のお客様お一人様2点までのご応募とさせていただきます。
◎抽選による購入はお一人様1点限りとさせていただきます。
◎ご当選後のキャンセルはお受けいたしかねます。
◎抽選のご希望がなかった作品に関しましては5月24日(土)11:00より会場にて販売いたします。
抽選販売についてのお問い合わせ:和光 美術部 03-3562‐2111(代表)


坂井直樹 鐵地象嵌匣「chroma」32×9×高さ10cm
結成から8年、3回目を迎える「金工の深化」では、金属の多彩な魅力や脈々と継承された精緻な技術をはじめ、深化を遂げていく6名の最前線の美の表現作品の数々が楽しめます。
また、5月24日(土)14:00から、出品作家によるギャラリートークが開催されます。
司会進行:川北裕子氏(パナソニック汐留美術館 学芸員)
◎混雑時には入場を制限させていただく場合がございます。


久米圭子 wonders 097-2 18×18×高さ16.5cm
◆「金工の深化Ⅲ ―Evolution of Metal WorksⅢ―」
【会期】5月22日(木)~6月1日(日)
【会場】セイコーハウスホール(東京都中央区銀座4-5-11 セイコーハウス 6階)
【問い合わせ先】03-3562-2111(代表)
【営業時間】11:00~19:00(最終日は17:00まで)
【休業日】無休
【入場料】無料
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Features
銀座・和光から、焼きたての贅沢を
2025.5.17
期間限定で登場「焼きたてフィナンシェ」
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「和光」アネックス1階のケーキ&チョコレートショップでは、昨年好評を博した「焼きたてフィナンシェ」が今年も期間限定で登場。
このフィナンシェは、店舗内のアトリエで一つひとつ丁寧に焼き上げられるもの。6月30日までの期間中、毎日12時と16時の焼き上がりのタイミングにあわせて訪れれば、まだ温かさを残す焼きたてをその場で購入できる。
フィナンシェ ミエル 432円(※数量限定、売り切れ次第終了)
フィナンシェ ショコラ フランボワーズ 432円(※数量限定、売り切れ次第終了)
今シーズンは、昨年人気を博した「ミエル」と新作の「ショコラ フランボワーズ」の2種類がラインナップ。「ミエル」は、焦がしバターとレモンの花のハチミツが調和した上品な味わい。口にした瞬間、ふんわりと香りが広がる。一方の「ショコラ フランボワーズ」は、濃厚なチョコレートと甘酸っぱいラズベリーが絶妙にマッチ。後を引く味わいだ。
「焼きたてフィナンシェ」を監修するのは、2024年4月に和光のシェフ パティシエに就任した小野雄大氏。ミシュラン星付きレストランでの経験を持ち、洋菓子コンクールの受賞歴を誇る彼の手によって、和光にふさわしい、丁寧で洗練された味わいが生み出されている。
今しか味わうことのできない焼きたての味。銀座を訪れた際、ぜひ立ち寄ってみては。
◆和光アネックス1階ケーキ&チョコレートショップ
【住所】東京都中央区銀座4-4-8
【営業時間】10:30~19:30(※日曜・祝日は19:00まで)
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グルメ最前線 トップレストランを探訪する
2025.5.9
「アマン京都」の日本料理「鷹庵」にて ミシュラン2つ星料理人の凄味を味わう
板場にすっきりと立つ髙木総一朗総料理長。
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本阿弥光悦ゆかりの地に立つのが「アマン京都」である。文句なしに素晴らしい施設に華を添えるのは、日本料理「鷹庵」だ。そこでは、ミシュラン2つ星シェフが繰り出す品々に、圧倒され尽くす体験が待っている。
洛北の鷹峯(たかがみね)の麓に位置する「アマン京都」
江戸時代初期の数寄者として、当代と後世に、とてつもない影響を与えた本阿弥光悦が棲んだ地こそが鷹峯村(光悦村)だった。
光悦はご存知のように、家業は刀剣の鑑定と研磨と浄拭(ぬぐい)である。と同時に、陶芸、漆芸、書、茶は超一流で、また琳派のプロデューサー的な存在でもあった。早い話が、レオナルド・ダ・ヴィンチのような人物だ。現代でも、彼の手による茶器や漆器のいくつかは国宝として評価されている。
京都市内の賑々(にぎにぎ)しさから離れてこの地に降りると、不世出の芸術家・光悦が居を定めた土地の、まさしく「霊気」のようなものを感じるのである。
日本料理「鷹庵」の外観。この建物で宴が始まると想うだけで、気持ちが高まる。
日本料理「鷹庵」を指揮するのは金沢「銭屋」の当主
アマン京都のエントランスを過ぎてすぐの右手にあるのが、日本料理の「鷹庵」である。当店を2020年4月から指揮するのは、ミシュラン2つ星の金沢の老舗料亭「銭屋」を率いる二代目当主・髙木慎一朗総料理長である。
氏の料理人としての出発点は、徒弟時代の「京都吉兆」にある。だから、開業する前年にアマン側から打診があった時には、「京都で料理をやるのはイヤだなあ。せめて滋賀県にして欲しい(笑)」と思ったそうだ。
氏は修業こそ京都で始めたが、海外留学の経験もあり、語学に堪能だ。さらに重要なのは、日本料理を海外の視点も含めて俯瞰できる数少ない人物であることである。フレンチの巨星アラン・デュカス氏との親交はその一例であるが、海外の有力なシェフたちとの間に幅広い人脈を持っている。
嬉しいことに、髙木氏の斬れ味鋭い料理は、ホテルの宿泊者でなくとも利用が可能だ。
日本料理「鷹庵」の内観。カウンター10席、テーブル24席。
マチュピチュのような施設内の石積み
ホテル全体についてひと言。
アマン京都は約2万4000平方メートルという広大な敷地を有している。自然林を含めれば、およそ32万平方メートルに及ぶという。この敷地はもともと、西陣織で巨万の富を築いた織物屋の大旦那が所有し、ここに織物美術館を造る予定だった。
樹木は豊かに生い茂り、果ては鹿苑寺(金閣寺)まで続く小川がせせらぎ、辺り一面びっしりと苔が生す。圧巻なのは、およそ40年もの月日をかけて設計し組み上げた、石畳や巨大な石積みである。それらには風格すら宿っている。
エントランスに設置された石門から先には、異次元の世界が。
「森の庭」と名付けられているが、それ以上の印象を受ける。深山幽谷とまでは行かないが、まさに森林だ。人はそこにあって唐突に、まるでマチュピチュの遺跡に入り込んでしまったような錯覚に陥るであろう。ちなみに、庭の散策は宿泊者のみに限られている。
宿泊棟をはじめとした各施設は、日本的な自然美の只中に、溶け込むように点在しているところが洒脱だ。
建物こそ新しいが、世界に冠たるイギリスの最上級のマナーハウス、もしくはインドのマハラジャのパレス、それらに迫るほどの超弩級かつ高品位なリゾートであると思った。言い換えれば、世界最高峰レベルのリゾートホテルの一つということになる。
話を「鷹庵」に戻して、料理をいくつか紹介する。
食事の前に供されたのは、京都市伏見区の純米酒「蒼空」である。辛味、酸味、甘味とバランスが実に良く、米の味も豊かだ。
その真価がじわじわと来る驚愕のお椀
土佐酢を引いた先付けの「うるい、ミル貝、車海老」に続いて出された、お椀が衝撃的だった。
まずは、ビジュアルの美しさに引き込まれた。漆黒の椀の中で、山椒を載せた淡路島の真っ白なアブラメ(アイナメ)が中心にあり、その周囲を桜の花びらが舞っている。葛で出汁に軽くとろみをつけたから、花びらが浮遊しているのだ。薄ピンク色が愛らしい。
衝撃はその味わいだ。その場でガツンと来る衝撃ではないところが逆に凄い。塩を強く効かせ、味を濃くして迫りくる料理は、どこにでもある。しかし、このお椀は違う。
アイナメの周りに桜の花びらが舞うお椀。
味付けは鰹と昆布の一番出汁に少々の塩だけだ。そこにアイナメの身と山椒と桜の花びらが精妙なバランスで味を付け足す。結果、汁の味は桜の花びらのように淡いのである。
この汁は口内の細胞に、優しく、どこまでも深く染みていく。いつまでも飲んでいたい……そんな気になる。
これは日本料理で言うところの「残心」というものなのだろう。家に帰った翌日、あるいは翌々日あたりに、「ああ、あのお椀は美味しかったなあ」と、ゴクリと喉を鳴らして思い焦がれるような、そんな一品だった。つまり、上品でどこまでも奥ゆかしい。
もう一点、特筆すべきはおそらくは水の質だ。まったりとしていて、肌理(きめ)が細かい。このお椀を成り立たせているのは、水の良さもあるに違いないと思った。聞けば、京都の名水とされる京見峠がこの近くに位置し、光悦寺はこの鷹峯の水をお茶に使うそうだ。
刺身の3種盛りはしない
京料理は奥ゆかしさを〝押し売り〟しているように感じる場面もあるのだが、鷹庵の料理は自然(じねん)の裡(うち)にあるように感じる。
大将の髙木氏は190センチメートルという巨躯なのだが、剣道をしていたせいか、立ち姿は軸がブレずスラッとしてとても美しい。そして自然体で一本を取りに来る。
そんな彼が目指すのは、京料理ではない。日本料理の本道は残しつつも、店のゲストの9割を占める外国人に、どうすれば美味しさを感じてもらえるかを突き詰めて考えた末の品々になっている。
例えば、刺身であるが、3種盛りなどということは絶対にしない。何を食べたか分からなくなるからだ。ゆえに、皿に盛るのは1種か2種だ。
実際に筆者が食べたときも、淡路島の鯛と、炭で炙った平貝の刺身は、それぞれが一皿に1種ずつで提供された。貝を炭火で炙る工程を目の前で見せてくれるのも、ゲストには楽しいはずだ。
また、ゲスト間には日本料理のリテラシーの差異があって当然である。例えば、刺身醤油に切り身をどっぷりと付けてしまうとかだ。
髙木氏は、日本料理を食す習熟度が違っていても、間違いが起きないように工夫をこらす。例えば、お皿を手で持つように促したりする。刺身醤油を出汁で割っておくのも配慮の結果である。醤油のつけすぎはなくなり、素材の味をより一層感じられるようにもなる。粗相は起きないし、きちんと味わえる。まさに一石二鳥である。
ここで出てきたのが宮城県石巻の純米吟醸「日高見」。やや辛口だがバランスは良く、食中酒に相応しい。
握りは、漬けマグロとサワラ。マグロの上には、醤油漬けした山葵の軸と葉っぱ、フキノトウ。
渋味とえぐみをユニバーサルな味に変換
例えば、日本の食材にある渋味とえぐみを考えてみよう。それらは、おそらく誰もが好むユニバーサルな味ではない。それをどのようにして、ユニバーサルな料理として落とし込むか、という問いがあるとする。その解答の一つが、目の前で握られた2貫の寿司、とくに漬けマグロのほうだ。
日本人の大人ならば、フキノトウや山葵は好きだが、外国人には馴染みにくい。そこで、フキノトウも山葵の軸も葉っぱも醤油に漬けたものを、漬けマグロの切り身の上に添えて醤油で統一した。そこに合わせるのは米酢のシャリである。
マグロのねっとりした旨味、酢飯の爽やかさ、そこに醤油でこなれた苦味とえぐみが混じり合う。この三位一体のコンビネーションによって、日本人だ外国人だという狭い領域を超えて、ユニバーサルに見事な味が実現されている。お願いだから、もう一貫ください。
続いて、「ワカメと湯葉のしゃぶしゃぶ」をゲスト自らの手で完成させるのもテンションが上がった。コンロで沸き立った鍋のお湯の中に放った黒いワカメが、フワッと緑色に変わるのも面白い。漬け汁であるちり酢がとてもいい。
とは言え、髙木さんの中では、「しゃぶしゃぶ」というよりは「あったかい酢の物」という意識だそうだ(笑)。
「湯葉とワカメのしゃぶしゃぶ」。ちり酢が美味しい。
高1でニューヨークの「ブルー・ノート」へ
話は逸れるが、BGMはずっとモダンジャズである。コルトレーンのアルバム「バラード」の中の1曲も流れた。そもそも髙木氏がジャズに出会ったのは、16歳のアメリカ留学時なのだそうだ。
あるとき、マンハッタンをぶらついていたら、やたらと行列しているライブハウスみたいなものがあって、入ってみることにした。1986年の11月のことだ。まるで知る由もなかったが、実はそこは「ブルー・ノート」というジャズ・クラブの総本山の一つだった。たまたまサラ・ヴォーンとナンシー・ウィルソンとエラ・フィッツジェラルドの3日連続公演だったという。ジャズファンならば、垂涎のライブだ。
初日のサラ・ヴォーンが誰かも知らず、紅顔の高校1年生は、彼女のヴォーカルの1曲目で魂をワシ掴みにされた。もちろん、残りの2日も通った。
よくそんなところに簡単に一人で入れたものだ。髙木少年は16歳で187センチもあったそうだ(笑)。だが、このようにしてハマったジャズの世界は、教養として今も生きている。
それにしても、髙木氏の引きの良さは天賦のものなのだろう。加えて、物怖じしないところと押し出しの良さは、アマン京都の日本料理「鷹庵」の総料理長たるに余人をもって代え難い。
ここで山形県上山市のオレンジワイン「プティ・マンサンオレンジ2017」が供された。柑橘系でありながら蜂蜜とスモーキーな味わいがする。マネジャーの七黒さんのペアリングが冴えている。
「平井牛のロース炭火焼」はすき焼き風。「すき焼きは焼き物だ」(髙木氏)。
「筍の揚げだし」は傑作だ
料理に戻る。
続くのは「函館の桜鱒の焼き物」。季節の魚だ。酒と醤油とみりん、スダチの絞り汁に漬けた切り身を、炭火で焼き上げた。照り焼きのような具合だが、皮はパリンパリンで身はほっくほく。魚の体液がアッチッチ、沸々と沸き返るほど火入れされていて、実に美味であった。タラの芽の天ぷらが添えてあるところが嬉しい。
位置づけとしてはメインの2品目となるのが「平井牛のロース炭火焼」である。ただの炭火焼ではない。肉の下に敷いたタレは、酒と醤油に卵黄を溶いてすき焼き風にしたものだ。肉の上にこんもりと載せてあるのは、一年に一度は食べておきたい花山椒である。とても嬉しい。優しい味の花山椒で、卵黄とともに牛肉に深みを添えてくれた。
しかし、これで終わりではなかった。「筍の揚げだし」が待っていた。見た目は本当にどうということはないのだが、これは素晴らしい。
「外国の人には筍の美味しさが伝わりにくい。田楽にしたり、出汁で煮含めるたりするのではなく、揚げ出しにしてみました」(髙木氏)
「筍の揚げだし」は筍の旨味を追究した斬新な傑作。
日本人ならば、茹でた厚切りの筍を食べるのは喜びに他ならない。春先の旬菜として、それは美味しいものとして、舌や脳髄に刷り込まれているからだ。しかし、中国系や韓国系を別にすれば外国人にとっては、筍は地下茎ともただの茎とも知れないヘンなものでしかないだろう。それをいかに調理するかは難しい課題と言える。
その解答は、薄めに切って、てんぷら粉で揚げることにあった(天ぷらとは、蒸し料理である)。そうすることで、筍の旨みと甘みは衣の中に閉じ込められて倍加するのである。まさに筍の旨味のストレート勝負の感がある。いや、真正面からお面を打ち抜いて1本!の気持ちよさだ。これは分かりやすく新しい一品である。
魚と肉のメインが終わった次という順番も面白い。通常であれば、冒頭の先付けの次あたりに出てきてもおかしくはない。
いかに日本料理から〝一歩を踏み出す〟か
総料理長が重視する日本料理の特徴に、「二十四節気(にじゅうしせっき)」がある。1年を24の季節に分けるのだが、野菜の旬はその季節に符合するという。今宵の料理では、うるい、桜の花びら、フキノトウ、タラの芽、花山椒、筍などが使われた。
季節感を存分に盛り込む日本料理の本筋は、ゆるぎなく守られている。
と同時に、〝一歩を踏み出す〟料理も多く含まれている。お椀、鮨、牛の炭火焼、筍の揚げだしなどがそれに当たる。これらは、伝統をふまえた上で型を大胆に崩した本阿弥光悦のアヴァンギャルド性に通じるものがあるだろう。
それは髙木総料理長の創意工夫の賜物なのだ。
「鯛の炊き込みご飯」には錦糸卵と胡麻がたっぷり。
最後が、「鯛の炊き込みご飯」だ。「外国人には鯛だけでは分かりにくいので、錦糸卵と胡麻をあしらいました」(髙木氏)という。錦糸卵と胡麻がたっぷりで、何杯でも行けてしまう罪深き大団円だった。炊き込みご飯の具は、季節によって千変万化するところがいい。
さて、外国人だ、日本人だ、ということを言い過ぎたかもしれない。実際は、外国人だけが喜ぶ料理などというものは存在しない。髙木氏がチャレンジしているのは、日本料理の本筋と革新のギリギリのせめぎ合いの中で、すべてのゲストを喜ばせることだ。
私たち食べる側にしてみれば、革新的(イノベイティブ)であるがゆえに、日本人だからこそ、新たな〝気づき〟を得ることができるのである。
鷹庵
住所:京都府京都市北区大北山鷲峯町1番
TEL:075-496-1335(レストラン予約9:00~18:00)
営業時間:12:00~15:00(13:00L.O.)、18:00~22:00(20:00L.O.)
ランチコース:20,000円、ディナーコース:40,000円
Toshizumi Ishibashi
「クレア」「クレア・トラベラー」元編集長
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